●四十肩・五十肩について
一般的に肩関節周囲炎などと言われており、それぞれの年代に発症した場合、つまり四十代なら四十肩、五十代なら五十肩と言われてもいます。
これらの年代に発症することが確かに多く、原因としては姿勢不良や加齢、そしてカルシウム不足等とまことしやかに言われていますが、どれも本当の原因ではありえません。
発症した関節部位は股関節疾患の説明でも記述していますが、石灰化が起こっており、では何故その石灰化という関節軟骨の変性が生じるのか、私なりの見解を簡潔に述べていきます。また、その具体的対処法もご説明していきます。
「関節の石灰化」という言葉を聞いたことがありますか?
胆汁が石灰化すると胆石になり、酸化した血液が十分にろ過されずに糖などと粘着して石灰化すると、腎結石や尿路結石になります。
臓器に起こる石灰化とはメカニズムが違いますが、関節も石灰化します。例えば、四十肩、五十肩、股関節疾患、手術を要する膝関節疾患、バネ指、変形性関節リウマチにおける指等で、関節と周辺の靭帯等が変成して石灰化すると言われています。動かすたびに骨がゴリゴリ、関節がバキバキと音がして、痛みを伴います。
一般的には、カルシウム不足により、身体が必要を感じて大量に分泌したカルシウムが、石灰化の原因だと言われていますが、本当にそうでしょうか。
石灰化を経験した方全てにカルシウムが不足していたとは考えにくいですし、実は骨の構成要素の8割近くがタンパク質で、カルシウムは骨を補強しているに過ぎません。その為カルシウムを摂っただけでは、骨密度はあまり上がらないのです。骨粗しょう症、ヘルニア、疲労骨折、圧迫骨折などの場合は、まずタンパク質を補強しなくてはいけません。ですから、関節の変成(性質が変わること)は、カルシウム云々の問題ではないのです。
では石灰化の原因は何なのか、ここで整理してみましょう。
① まず長期間の「炎症」が挙げられます。
関節部位にはリンパ節が備わっており、血管とリンパの長期的炎症がその要因の一つであるのは間違いありません。炎症が長く続くと、関節軟骨部の細胞は変性してしまうのです。ちなみに、この炎症の一番の原因は長期的心因性=ストレスです(続く②を参照)。
② 次に「糖化」(例えば軟骨、靭帯、血管、神経等のあらゆる細胞と糖が粘着し機能を抑制してしまう変化)が挙げられます。
①に関連しますが、ストレスを感じると、身体を安定させようと副腎からステロイドホルモンが分泌されます。このホルモンはストレス時の過剰な免疫活動(例えばアレルギーによるアナフィラキシーショック等)を抑制します。急なショック症状による心拍や血圧の急上昇、血糖値低下を防ぎ、安定した状態に戻すのもステロイドホルモンなのです。そして免疫機能と炎症を抑制します(ステロイドホルモンは免疫細胞であるリンパ球に反応して無力化し、リンパ球供給器官であるリンパ節や脾臓を萎縮させる機能を持つため)。つまり①のリンパと血管の炎症がストレスによって継続するとホルモン(別名糖質コルチコイド)が分泌され、その成分は糖なのです。このホルモンの継続分泌が糖化を招きます。勿論、糖質の多い食べ物や果物の摂り過ぎが糖化を引き起こすのは言うまでもありません。この糖化も細胞の変性の一役を担います。
③ は「圧」です。
五十肩であれば、①②の状況下で痛みのある側の腕を下にして寝る習慣が石灰化を招きます。痛い側を下にしなくなれば、やがて関節への必要以上の圧が緩和され、酸素や血液等の通り道ができ(ここでは便宜上酸道と言います)、細胞の代謝が再開され関節も回復します。しかし、股関節や膝は肩とは違って体重という重力が常にかかるので、酸道が確保できず変性も回復せず、手術に至る症例が多いのです。
④ 最後は、カルシウムではなく「リン」という体内ミネラルが原因だと考えられます。
リンは発火しやすく、長期的炎症で変性されていきます。体内では融点が違うため、火葬場のように骨がボーボーと燃えるわけではありませんが、リンはカルシウムに次いでミネラルを多く含み、結合性を有して働くその特徴が、関節軟骨を変性させるのだと個人的にはにらんでいます。
これら4つの条件がそろうことで関節が変性を起こすと思われます。
肩の石灰化は、関節の炎症が糖化を招き、そこに長期間圧迫が加わり徐々に関節が変性することで起こります。ですから、その圧迫を取り除いて酸道を作ることで、血液やリンパの循環が回復して炎症も収まっていきます。
ベッドにうつぶせに寝て、トラブルのある側の腕を肩の高さ近くまで持っていきます(①)。肘が90度に曲がるように、脱力した前腕をベッドから垂らします(②、写真では左腕)。上腕の下にタオルなどを敷いて肩より若干高くすることで、胸部が広がり肩関節の圧迫が緩むわけです。
その体勢のまま、脱力した前腕を前後にゆらゆらと揺らします。前後幅1cm位までの微細な揺れで充分です。それ以上大きく揺らすと力が入ってしまい、関節への圧が強くなり過ぎるからです。筋力トレーニングやストレッチも、石灰化した部位には圧が強過ぎて逆効果になってしまいます。
この方法はパートナーで行うとリラックスできて更に効果が期待できます。これら一連の手法を当院オリジナル「微酸道法」と命名しました。
ここで改めて、私が命名した微酸道法についてご説明します。
関節部が石灰化する条件は、リンパと血管の長期間の炎症(酸欠による細胞の代謝不全も引き起こす)、関節軟骨部の変性=糖化、継続的な関節への圧迫、石灰化する材料としてのリン等で、これらの条件がそろってしまった場合に石灰化が起こると述べてきました。
ですから、それ以上の圧迫を取り除き、リンパと血液(=酸素と栄養)の循環を回復するための通り道(リンパ管と血管の圧迫の緩和を指す)を確保することを酸道と命名し、これらの条件を満たすオリジナル対処法を、微細な振動によって循環を回復させ酸道を確保し代謝を促すイメージから微酸道法と名づけました
1回5分以上は続けたいところです。1回でも可動域は広がり楽になりますが、変性している場合には、一日に何回でも、回復するまで毎日行います。
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